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運用サポート情報解説

太陽雑音について

衛星通信を利用する場合に考慮しなければならない問題に太陽雑音による回線品質の劣化があります。太陽からはさまざまな周波数の電磁波が輻射されており、その電磁波が通信回線を劣化させる雑音となります。

地球局のアンテナ指向ビームは常に静止軌道上の衛星に対して向けられています。この地球局アンテナの指向ビームの延長線上を太陽が横切るときに、地球局の受信機に太陽雑音が加わり受信C/Nが劣化し、回線品質の劣化が生じます。これは地球局の受信機の見かけ上の雑音温度が上昇したのと同様となります。

太陽雑音の発生する日時は、衛星の経度及び地球局の緯度、経度、アンテナ径により幾何学的に求める事ができます。北半球に受信局がある場合、春分の日の前/秋分の日の後にそれぞれ数日間発生する事になります。(南半球の場合はこの逆になります)また、発生する時間は受信地球局の経度が衛星の経度より西にある場合は午前中に発生し、東にある場合は午後に発生します。

受信アンテナの電力半値幅がθであったとき、太陽が受信アンテナの電力半値幅にかかる角度βは次のように与えられます。

β = 0.5 + βo [度]

太陽の見かけ上の直径は約0.5度 地球の自転は1度あたり4分かかるため、太陽が受信アンテナの電力半値幅を通過する最長時間は

4 × β [分]

となります。
また、太陽が受信アンテナの電力半値幅にかかる期間は太陽の赤緯が1日あたり約0.4度変わるため、

β / 0.4 [日]

となります。


受信アンテナの電力半値幅は、直径をD、受信周波数の波長をλとしたときパラボラアンテナの場合一般的に以下の式で求められます。

θ = 70 × λ / D [度]

このことより受信アンテナの直径が大きくなるほど、太陽雑音の継続時間及び発生期間は短くなります。但し、特に大口径のアンテナをご利用の場合アンテナ指向ビームの特性、追尾の有無などの条件を考慮した場合、発生予測時刻はアンテナ径2.4mの予測時刻とほぼ等しくなりますのでアンテナ径2.4mの予測時刻をご参照下さい。

受信アンテナ直径に比例してアンテナゲインが高くなる為、太陽雑音の量を多く受けます。但し、太陽雑音による衛星通信回線への影響は、アンテナ径のみによって決定されるものではなく各受信地球局の回線マージン、受信機の雑音温度、通信方式等の要因によりその影響の度合いが異なります。

COBについて

  • 衛星の動きの例

静止衛星は地球の扁平性・太陽や月の引力・太陽輻射圧の影響を受け僅からながらも常に移動しています。

  • 地球の扁平性による影響 ⇒ 西へドリフト
  • 太陽や月の引力による影響 ⇒ 南北方向への日変動
  • 太陽輻射圧による影響 ⇒ 東西方向への日変動
  • 静止衛星軌道保持範囲

安定的に衛星通信を行うため、静止衛星はノミナル位置(Center of BOX)を中心とした静止衛星軌道の概ね 70km×70km×15km の範囲内にコントロールされています。

  • アンテナゲインの変化

アンテナが大口径になると、指向性が高くなるため(ビームがシャープになる)衛星の位置とアンテナの指向方向のずれがアンテナ性能の劣化に繋がります。
アンテナをノミナル位置を指向しないで方向調整した場合には、小型のアンテナでは影響は小さいですが、大口径になると顕著に影響をうけ送受信レベルに大きな変動が出ることになります。

方位角・仰角・偏波角

  • 方位角(AZ:Azimuth):真北方向から時計回りに測った衛星方向の角度
  • 仰角(EL:Elevation):水平面から衛星方向からの見上げた角度
  • 偏波角(POL:Polarization):電界の振動方向の角度

UATについて

  • UAT(Uplink Acccess Test)の目的
    送信地球局が使用する衛星およびトランスポンダに正常に回線を設定できることを確認し、その他の衛星回線への与干渉を未然に防止又は与干渉による影響を最小にする目的で行ないます。
  • UATでの確認内容(代表例)
    1.送信する地球局、設置場所、担当者名等
    2.UATを行なう衛星、トランスポンダ
    3.交差偏波分離度(Xpd)、隣接衛星干渉(Is)
    4.電波型式、送信周波数及び送信電力
    5.送信周波数の周波数偏差、帯域幅、不要発射

用語解説

  • 交差偏波識別度(Xpd:Cross Polarization Discrimination)
    衛星の偏波面と送信地球局の偏波面があっていないと交差偏波への漏れ込みが増大します。所望する偏波側に送信されている電力と交差偏波側に送信されている電力の比(D/U比)を交差偏波識別度といいます。また、偏波面があっていてもアンテナの衛星指向方向が正しくない場合にも漏れ込みが増大することがあります。
  • 隣接衛星干渉(Is)
    軸外輻射による隣接する衛星に対する与干渉のことを言います。
  • 不要発射
    HPAを最大出力近くの非線形領域で利用すると、デジタル信号に歪(リグロース)が発生したり、複数の信号を送信した場合は相互変調雑音が発生する。これらの歪や雑音は他の通信にたいする干渉雑音となります。

交差偏波干渉

隣接衛星干渉

リグロース

相互変調雑音

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