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ニュースリリース

「産業界との融合的連携研究制度」
2020年度4月新規研究チームの設置について

2020年04月01日

 理化学研究所(理研)は、新規事業等を目指すうえで企業が抱える研究開発課題に対し、企業と理研の混成チームを理研内に設置し、企業側の担当者をチームリーダーとして受け入れる「産業界との融合的連携研究制度[1]」において、新たに研究チームを2020年4月1日付で設置いたしました。
 研究チームは、同制度2020年度研究課題の募集注1)にもとづいて、スカパーJSAT株式会社、動物アレルギー検査株式会社、日産化学株式会社および日本ゼオン株式会社・横浜ゴム株式会社から、それぞれ提案のあった研究課題の採択を受けて設置されるものです。設置後は、理研と企業の相互の研究力・技術シーズを融合し、社会的課題の解決に向けた実用化・製品化を目指す研究開発を実施します。


注1)2019年8月1日トピックス「企業と理研の研究チームを作りませんか?」
https://www.riken.jp/pr/news/2019/20190801_1/index.html

 

1.新規研究チームの概要                            

 新規研究チームは、以下の採択課題にもとづき、課題の提案企業主導で理研内に設置されます。

(1)研究チームの概要(提案企業50音順)
 1.「衛星姿勢軌道制御用レーザー開発研究チーム」(和光地区)
  (Satellite Orbital State Control Laser Laboratory)

提案企業:スカパーJSAT株式会社
チームリーダー:福島忠徳(着任予定)
採択課題名: 衛星姿勢・軌道制御のためのパルスレーザー開発
研究概要:宇宙空間で制御不能になった人工衛星等が増えていることは世界的に重要な課題です。本チームはこの解決に向け、パルスレーザー照射によるアブレーション(固体の表面が蒸発・浸食によって分解する現象)により発生する推力により、制御不能になった人工衛星等を非接触で回転・移動させて除去する衛星に搭載するレーザーアブレーションサブシステムの研究開発を進めます。

 

 2.「人工ワクチン研究チーム」(横浜地区)
  (Vaccine Innovation Laboratory)

提案企業:動物アレルギー検査株式会社
チームリーダー:増田健一
採択課題名: 化学合成多重抗原ペプチド(mMAP)によるウイルス感染万能ワクチンの開発とその感染予防・治療への応用

研究概要:現存する新興感染症のほとんどは、変異ウイルスが動物から人間に感染することで発症しています。この問題に対し、本研究チームでは病原体構造タンパクのデータベースから変異にも対応可能なワクチンシステム(改変多重抗原ペプチド)の研究を進め、新興感染症に対応するワクチンを迅速に開発できる技術を確立し、その技術により抗体医薬の開発にも成功しました。
第二期となる今回の融合的連携研究では、このワクチンシステムの実用化を目指します。
 

 3. 「三次元線量計研究チーム」(和光地区)
  (3D Dosimeter Research Laboratory)

提案企業: 日産化学株式会社
チームリーダー:濱田敏正

採択課題名: 放射線治療用三次元線量計の開発
研究概要:がんの放射線治療では健康な組織を可能な限り避け、目的の腫瘍部位に放射線を照射するため、照射計画の事前検証が不可欠です。本研究チームでは、1)三次元で照射位置・線量検証が可能、2)放射線の通り方が人体に近い、3)多方向から照射可能、といった利点を有する新規三次元化学線量計の開発を進め、がんの放射線治療における照射計画検証の高精度化を目指します。

 

 4. 「バイオモノマー生産研究チーム」(横浜地区)
 (Bio-monomer Production Laboratory)

提案企業:日本ゼオン株式会社・横浜ゴム株式会社
チームリーダー:谷地義秀(日本ゼオン株式会社)
採択課題名:バイオブタジエンの微生物による生産と化学重合に関するプロセス開発
研究概要:これまでの共同研究において、発酵生産試験で、バイオブタジエンの生成を実現しました注2)。この技術により、バイオマスからバイオブタジエンを製造することが可能となります。
本研究チームにおいて、酵素のブタジエン生産性をさらに進化させ、精製プロセスを確立し、効率的なバイオブタジエン製造実現に向け研究を進めてまいります。

 

(2)設置期間
2020年4月1日から2023年3月31日まで

注2)理化学研究所、横浜ゴム、日本ゼオンの共同研究

 

2.補足説明                      

[1] 産業界との融合的連携研究制度
新規事業・製品化を目指すうえで企業が抱える研究開発課題に対し、企業と理研の研究力を融合して取り組むために企業・理研の混成チームを理研内に設置して、企業主導で課題解決に取り組む制度。形式知(特許や論文等)のみならず暗黙知(ノウハウ等)の移転も実現し、基礎的な研究成果を目に見える形で社会に還元し、日本の産業技術の新たな展開に貢献する。2004年度より「理研の研究成果を活用して実用化・製品化を目指す課題」を企業から公募し、採択課題を選定している。
https://www.riken.jp/collab/programs/entry/