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ニュースリリース

上空からの通信エリア化に向けた39GHz帯の電波伝搬測定実証実験
~HAPSによる市街地・山林・離島のユースケースを想定~

2021年03月10日

 株式会社NTTドコモ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:井伊 基之、以下 ドコモ)とスカパーJSAT株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 執行役員社長:米倉 英一、以下 スカパーJSAT)は、第5世代移動通信方式の高度化(5G evolution)および第6世代移動通信方式(6G)における上空からの通信エリア化の実現に向けて、2021年2月15日(月)から2月26日(金)まで、小型飛行機を活用して、市街地・山林・離島での電波伝搬測定の実証実験(以下、本実験)を行いました。ドコモとスカパーJSATは、上空20kmの成層圏に通信装置を搭載した高高度無人機HAPS(High Altitude Platform Station)を飛ばし、広いエリアでの通信サービス提供をめざす取り組みを進めています。本実験は、その取り組みの一環です。今後も実証実験を重ね、2023年度までに、成層圏で実証実験を行うことを予定しています。 

 本実験は、これまでの移動通信方式では1Gbpsを超えるような高速通信の提供が難しかったへき地、空、海上などへの通信エリアの拡大を目的としています。実験は、市街地(小田原)、山林(丹沢)、離島(伊豆大島)で実施しました。小型飛行機を用い、上空約3 km先の受信装置に向けて、5Gでの高速通信に適したミリ波(39GHz帯)、および比較のためミリ波よりも電波が飛びやすい低い周波数(2GHz帯)を利用した電波伝搬を測定しました。市街地では建物などの障害物や反射波の影響、山林では地形や樹木の影響、離島では海上からの低い仰角や雲の影響などを測定しました。その結果、「さまざまな環境による39GHz帯と2GHz帯の電波の飛びやすさ」や「飛行機の旋回が電波の飛びやすさへ与える影響」などが分かりました。

  • 山林(丹沢)での実験環境
      

  • 実験に活用した小型飛行機

 また、本実験は総務省による電波資源拡大のための研究開発「HAPSを利用した無線通信システムに係る周波数有効利用技術に関する研究開発」(以下、本研究開発)における固定通信システムの研究開発の一環として実施したものです。2020年10月に、スカパーJSATを代表研究機関として、ドコモ、国立研究開発法人情報通信研究機構(本部:東京都小金井市、理事長:徳田 英幸、以下 NICT)およびパナソニック株式会社(本社:大阪府門真市、代表取締役社長:津賀 一宏、以下 パナソニック)が本研究開発の実施者として採択され、研究開発活動を開始しています。本研究開発では2023年度までに、以下の各課題解決をめざすとともに、成層圏での実証実験を行うことを予定しています。

 今後もドコモとスカパーJSATは、本研究開発を通じて5G evolutionおよび6GにおけるHAPSを用いた通信エリアの拡大技術の確立をめざすとともに、さらなる無線通信技術の進化に向けて研究開発を推進してまいります。 

※参考:https://www.soumu.go.jp/main_content/000692246.pdf




別紙1

上空伝搬測定実験の詳細

1.実証実験内容

 5G evolutionおよび6Gにおける上空からの通信エリア化の実現に向けて、上空を旋回する小型飛行機への電波伝搬測定を行いました。市街地(小田原)、山林(丹沢)、離島(伊豆大島)を電波の送信地点とし、半径1kmから2kmで旋回する小型飛行機を受信地点としました。送信地点から見た小型飛行機(受信地点)への仰角は、高度20kmで旋回するHAPSのユースケースと同等になるように決定しました。周波数帯としては、5Gでの高速通信に適したミリ波(39GHz帯)、および比較のためミリ波よりも電波が飛びやすい低い周波数(2GHz帯)を利用して測定を行いました。また、測定は見通しの環境に加えて、各ユースケースにおける建物や樹木などの遮蔽物を挟み、受信電力の測定を行いました。

  • 市街地での実験における建物

  • 山林での実験における樹木

 実験の結果、遮蔽物のない見通し環境の場合はほぼ机上計算と同じ受信電力が得られる一方で、建物や樹木を挟んだ場合は39GHz帯の受信電力の損失は比較的大きいことが分かりました。また、降雨がない場合においては雲の影響は比較的小さいことが確認できました。このような遮蔽物の影響は、複数の地上局を切り替える技術(サイトダイバーシチ)などを用いて軽減することを検討していきます。

 さらに、今回の実験では小型飛行機の位置や飛行姿勢によらず、同じ指向性パターンのアンテナを用いて送受信を行ったため、飛行機の旋回の影響でアンテナの角度が変化することにより、受信電力が大きく変化することも分かりました。この実験結果により、将来のHAPS実用化に向けては、このような旋回による影響を抑えて一定の受信電力を保持する制御技術が重要であると確認できました。

2.実験期間

2021年2月15日(月)~ 2021年2月26日(金)

3.実験場所
 ①神奈川県小田原市  ドコモショップ小田原東店
 ②神奈川県足柄上郡山北町 「ひだまりの里」オートキャンプ場
 ③東京都大島町野増 伊豆大島 三原山 山頂口展望台

4.使用周波数帯
 ①39.75GHz帯 (無変調波)
 ②2.2001GHz帯 (無変調波)

5.実験イメージ

  • 送信地点に配置した送信機

  • 小型飛行機に設置した受信アンテナ

6.役割分担

ドコモ: 実験計画の策定、送受信装置の提供、伝搬測定の実施
スカパーJSAT: 実験の統括、小型航空機の手配
(小型航空機への送受信装置搭載については、NICTがサポート)




別紙2

本研究開発の概要

 

1.目的

 HAPSを用いたミリ波帯(Q/V帯)の広帯域な周波数(38.0-39.5GHzを中心とした36.0-42.5GHz帯)を利用して、5G evolutionおよび6Gの時代に期待される多様なユースケースや災害対策における基地局へのバックホール回線※1の需要に対して、タイムリーかつ高速・大容量な通信回線を提供できるHAPSシステムの開発をめざします。また、ミリ波帯を用いるHAPS通信の周波数利用効率※2を改善し、HAPSシステムの実用化に向けた要素技術を確立します。


2.研究開発内容

 本研究開発では、HAPSに搭載するミリ波帯の通信装置、および対向する地上局を開発し、HAPSの位置や飛行姿勢が変化した場合においても、他の地上システムからの電波による干渉を軽減させつつ電波の送信方向を制御し、無線通信を成立させることをめざします。また、複数の地上局を切り替える技術(サイトダイバーシチ)などを用いて、降雨減衰の影響が大きいミリ波帯においても、従来の国内における静止衛星システムを利用した携帯電話のバックホール回線と同等の接続性を確保します。
 周波数利用効率については、静止衛星システムでは、3 bit/symbol前後であったスループットを1.1倍以上の3 bit/symbol後半から4 bit/symbol台に改善することを目標とします。

  • 本研究開発におけるHAPSシステムの概要



3.研究開発予定

 本研究開発は、2020年度に全体のシステム設計を行い、2021年度は各要素技術の開発、2022年度に各要素技術の単体試験、2023年度に統合実証試験を行う予定です。

  • 電波伝搬試験および統合実証試験の計画

 本研究開発は、総務省の「電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)」の一環として実施しています。 

※1バックホール回線とは、移動通信ネットワークにおける多数の無線基地局とコアネットワークとの間の高速大容量な情報伝送をサポートする固定回線を表します。
※2周波数利用効率とは、単位となる周波数や時間の無線リソースで送信可能な情報ビット数を表します。周波数利用効率を向上させることで、より高速大容量な通信が実現できます。




参考

会社概要

 

■株式会社NTTドコモ
代表者:代表取締役社長 井伊 基之
営業開始日:1992年7月1日
資本金:9,496億7,900万円(2020年3月31日時点)
本社所在地:東京都千代田区永田町2-11-1 山王パークタワー
事業内容:通信事業、スマートライフ事業、その他の事業

■スカパーJSAT株式会社
代表者:代表取締役 執行役員社長 米倉 英一
設   立:1994年11月10日
資本金:500億8,300万円
本社所在地:東京都港区赤坂1-8-1
事業内容:放送と通信融合のトップランナーとして、アジア最大の18機の衛星を保有する、有料多チャンネル放送と衛星通信を提供している国内唯一の事業会社です。加入者数約300万を誇る日本最大の衛星有料多チャンネルプラットフォーム「スカパー」を通じて多種多様なエンタテインメントをお届けし、日本・アジア・オセアニア・ロシア・中東・ハワイ・北米をカバーする衛星通信サービスは、「社会の安心・安全・便利」を支えています。また、宇宙データを活用した世界最先端のテクノロジーを活用したビジネスソリューションを開発し、お客様のより一層のデジタルトランスフォーメーション推進への貢献に向けて事業活動を推進してまいります。

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