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ニュースリリース

HAPSを介した携帯端末向け直接通信システムの早期実用化に向けた開発の加速と
実用化後の利用拡大を見据えた高速大容量化技術の研究開発を開始

2023年12月07日

 株式会社 Space Compass(本社:東京都千代田区、以下 Space Compass)、株式会社NTTドコモ(本社:東京都千代田区、以下ドコモ)、日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、以下NTT)、スカパーJSAT株式会社(本社:東京都港区、以下スカパーJSAT)の4社は、成層圏を飛行する高高度プラットフォームであるHAPS(※1)を介した携帯端末向け直接通信システムの早期実用化に向けた開発の加速と実用化後の利用拡大を見据えた高速大容量化技術の研究開発(以下「本開発」)を開始しました。なお、本開発は、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT(エヌアイシーティー))が公募する「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」に採択されて取り組むものです。

1.背景
 4社はこれまでBeyond 5Gの実現に向け、空・海・宇宙などあらゆる場所へ通信サービスを提供する「超カバレッジ拡張」の検討を進め、HAPSを含む非地上ネットワーク(NTN:Non Terrestrial Network)と呼ばれる宇宙RAN(Radio Access Network)の構築に向けた研究開発を行ってまいりました。なかでもHAPSは、成層圏から空・海・地上に向けて通信サービスを提供するという今までにないネットワークであり、災害対策への活用のほか、離島や山間部、海上などのエリア化、それによるドローンや船舶などの利用範囲拡大といった通信サービスの飛躍的な利便性向上が可能となります。

 本開発は成層圏を無人飛行するHAPSを介し、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末へ直接通信サービスを提供するシステムの早期実用化、およびその高度化を目的として行うもので、HAPS機体を用いた成層圏環境の携帯端末向け通信実験を日本国内で実施することをめざします。また、Beyond 5G時代におけるHAPSの普及とユースケースの拡大を図るため、携帯端末とHAPS間の通信(以下サービスリンク)の高速大容量化やHAPSと地上GW局(※2)間の通信(以下フィーダリンク)を途切れさせない技術の実現、TDD(※3)周波数帯の活用など、システムの高度化を目的とした開発に取り組みます。

2.各社の役割
■Space Compass
2025年度中に開始をめざしているHAPS通信サービスの事業化を見据え、社会実装に向けた技術課題の解決や実証実験などの活動を大きく推進する本開発を代表研究者として取り纏める。また、将来のHAPS通信サービスのユースケース拡大に向けた要件定義や実装技術の開発を行う。
■ドコモ
「5G Evolution and 6G」に向けて、HAPSを含むNTNで移動通信事業のカバレッジを空・海・宇宙へ拡張することを目的に本開発を推進する。本開発では、主としてサービスリンクの高効率化/大容量化を実現する携帯事業者向けの地上設備及びHAPS搭載型の基地局開発などを行う。
■NTT
本開発では、主としてHAPSのフィーダリンクにおけるサービス品質の向上のための制御技術(サイトダイバーシチや送信電力制御など)を確立する。Beyond 5G時代のIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)戦略として宇宙空間のICTインフラ基盤の実現に向けて、地上網と統合したNTNの技術を確立し、付加価値を提供することで社会に貢献する。
■スカパーJSAT
本開発では、主としてフィーダリンクの代替方式(衛星バックホール、地上GWのマルチ接続による接続率向上など)について開発を行う。Beyond 5G時代の宇宙事業戦略として衛星とHAPSを一体としたネットワークを地上系の複数ネットワークと繋げて、様々な付加価値を提供するNTN事業をめざす。

 今後も4社は、本開発を通じてHAPSによる成層圏からの通信サービスの品質向上、および柔軟かつ高効率なHAPS通信サービスの運用を可能とする開発を推進し、Beyond 5G時代における空・海・宇宙などあらゆる場所への「超カバレッジ拡張」を実現する宇宙RANの開発に取り組んでまいります。

なお、本開発の取り組みは、2024年1月17日(水)からドコモが開催する
「docomo Open Houseʼ24」へ出展します。
https://docomo-openhouse24.smktg.jp/public/application/add/32

  • <本開発の全体概要図>

※1 HAPS: High-Altitude Platform Stationの略称。地上約20km上空の成層圏を数日〜数か月の長期間に渡って無着陸で飛行できる無人飛行体を指します。機体には中継器などを搭載し、直径100~200km程度のエリア化が可能となり(機体設計により変動)、従来エリア化が困難であった空、海上をはじめ、採算性の観点からエリア化されていなかった過疎・中山間地域なども対象とすることが検討されています。
※2 地上GW(ゲートウェイ)局:HAPSと地上の通信ネットワークを中継する地上局。
※3 TDD:Time Division Duplex、時分割複信のこと。

Space Compass について

Space Compass はNTT とスカパーJSATが設立した合弁会社です。代表取締役 Co-CEO 堀 茂弘、同 松藤 浩一郎。宇宙統合コンピューティング・ネットワークの構築により、持続可能な社会を実現します。この構想の第一歩として、宇宙データセンター(宇宙における大容量通信・コンピューティング基盤)、宇宙 RAN(Beyond 5G/6G におけるコミュニケーション基盤) の事業・サービスに取り組んでいます。今後はIOWNなどの革新的な技術も活用し、さらなるサービスの強化をめざしていきます。https://space-compass.com

スカパーJSATについて

スカパーJSATは、宇宙事業とメディア事業を両輪とする国内唯一の事業会社です。宇宙事業では30年以上にわたり静止軌道衛星を保有・運用し、現在はアジア最多17機の静止衛星を介して「スカパー」の伝送や航空機・船舶向けインターネット回線、災害時のバックアップ回線など様々な衛星通信サービスを提供しています。また、超スマート社会の実現に向けて、すべての空間を対象とした革新的な通信ネットワーク及び地球規模のデータ収集ネットワーク構築を推進しています。メディア事業では、有料多チャンネル放送サービス「スカパー」、動画配信サービス「SPOOX」に加え、光回線を経由した地上波・BSならびに「スカパー」の再送信サービスを提供するFTTH事業にも取り組んでおります。また、保有する様々なアセットを活用してお客様の課題解決を支援するメディアソリューション事業にも進出し、ビジネスの多角化をめざしております。https://www.skyperfectjsat.space



別紙

研究開発概要

 

1. 目的
① HAPS通信サービスの早期実用化推進
HAPSを介した携帯端末向け直接通信システムの実用化に向けた技術課題を解決し、国内でのHAPS通信サービス実験を実施することで、Space Compassがめざす2025年度中の早期実用化を推進します。
②Beyond 5Gに向けたHAPS通信サービスの高度化
将来的なHAPSの普及とユースケースの拡大を図るため、HAPS直接通信システムの高速大容量化技術、及び海上エリアでの運用やTDD周波数帯の活用などHAPSの柔軟なサービス運用に資する研究開発を実施します。

2. 研究開発内容
本研究開発は、NICTによる「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」における令和5年度新規委託研究の公募「Beyond 5Gにおける超広域・大容量モバイルネットワークを実現するHAPS通信技術の研究開発(課題番号077)」のうち、研究開発項目2「HAPSのサービスリンクの多重化による高速大容量化技術の研究開発」及び、研究開発項目4「HAPSのフィーダリンクにおける柔軟に切替え可能なGW局との通信方式による高速大容量化技術の研究開発」に採択されたものです。代表研究者はSpace Compassが担当し、ドコモ、NTT、スカパーJSATは共同研究者として参画します。具体的には、各研究開発項目に対して以下の実施体制で取り組みます。

3. 研究開発期間
2023年11月2日~2028年3月末(最長で継続した場合※)
※2年毎に行われるステージゲート評価により、その時点で研究開発が終了となる可能性もございます。

4. 実験スケジュール・マイルストーン
本研究開発では、2025年度までに早期実用化に向けた国内成層圏環境でのHAPS通信サービス実験を行い、2027年度までにHAPSのサービスリンク及びフィーダリンクにおける研究開発成果の統合実証試験を行う予定です。