ニュースリリース
スカパーJSAT横浜衛星管制センターに 「Universal NTNイノベーションラボ」を構築
~非地上系ネットワークと5G技術を活用した試験を開始~
2024年11月25日
スカパーJSAT株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 執行役員社長:米倉 英一、以下スカパーJSAT)は、11月1日付で、横浜衛星管制センター(Yokohama Satellite Control Center、以下YSCC)内に非地上系ネットワーク*1(NTN:Non-Terrestrial Network)の技術検証環境「Universal NTNイノベーションラボ」(以下NTNラボ)を構築しました。「Universal NTN」は、静止軌道(GEO)衛星*2、非静止軌道(non-GEO)衛星*3、さらに高高度プラットフォーム(HAPS)*4などの非地上系の通信インフラを融合し、ユーザーが意識することなく、いつでも、どこでも最適な通信経路へシームレスに自動で接続できることを目指す、革新的な非地上系ネットワークです。「NTNラボ」は、この「Universal NTN」の実現に向けた技術試験の拠点として、5G NTN*5技術を中心に、衛星などを活用した新たな通信技術の発展を支えていきます。
「NTNラボ」環境構築の背景とビジョン
5G NTNは、地上系と非地上系のネットワークの連携を容易にし、世界中のあらゆる場所や空間で通信インフラを強化できる次世代の通信技術として期待されています。「NTNラボ」は、3GPP*7による5G NTN標準化に対応した技術試験などを自社で行う環境として、新たに構築しました。スカパーJSATが保有する静止衛星とYSCCの設備を活用し、NTN技術の商用化に向けた技術基盤の構築を目指します。
「NTNラボ」は段階的に拡張予定であり、まずは、スカパーJSATの衛星や設備を活用し、パートナー企業の協力を得ながら5G NTNの基礎技術の検証を行い、設備の充足化・高度化を進めます。その後、2025年度下期を目途に、さまざまな企業や団体が将来のユースケースに対応した実証試験や技術開発を共同で行えるよう、「NTNラボ」のオープン化を計画しています。
最新設備を備えた試験環境
「NTNラボ」では、米国Viavi Solutions社の「TM500」とドイツRohde & Schwarz社の「CMX500」といった、5G NTN対応の高性能なユーザー端末(UE)*8および無線基地局(gNB)*9のエミュレーター*10を導入しています。これにより、商用展開を視野に入れた高度な技術検証が可能となり、多様な検証が行われる予定です。
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(左)今回導入されたエミュレーター
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(右)試験で使用する可搬型地球局(VSAT)
初期試験と今後の展望
「NTNラボ」での初期試験として、3GPPリリース19*11で標準化が進むKuバンドと5G NTN技術を活用した試験を計画しています。この試験を通じて、衛星通信による高信頼な通信環境を提供し、地上系ネットワークと非地上系ネットワークのシームレスな連携を可能とする技術の確立を目指します。
スカパーJSATは、「NTNラボ」を未来の通信インフラを支える拠点として活用し、技術革新をリードしながら、さらに企業や研究機関と連携することによって、NTN技術の商用化と新たなビジネスチャンスの創出に取り組んでいきます。「NTNラボ」は、今後も未来の通信インフラを支え続けます。
*1 NTN (非地上系ネットワーク、Non-Terrestrial Network): 衛星やHAPSなどの多様な通信プラットフォームを介して、地上に限定せず、海、空、宇宙などの異なる空間を多層的につなぐシステム。
*2 静止軌道(GEO/Geostationary Earth Orbit)衛星: 地球の赤道上空約36,000kmの静止軌道上で運用する人工衛星。静止軌道衛星は、地球の自転と同じ速さで地球を周回するため、地上からは静止しているように見え、常に同じエリアをカバーできる。
*3 非静止軌道(non-GEO/non-Geostationary Earth Orbit)衛星: 低軌道や中軌道など、主に静止軌道よりも低い高度の軌道上を周回する人工衛星。
*4 高高度プラットフォーム(HAPS/High Altitude Platform Station): 地上から約20km上空の成層圏で運用し、地上へ通信・観測サービスの提供を行う無人飛行機体。
*5 5G NTN: 第5世代(5G)移動通信システム用に3GPP※7によって仕様策定された新しい無線アクセス技術。
*6 Kuバンド:一般的に衛星通信で使用される、12GHzから14GHzまでの周波数帯。
*7 3GPP(3rd Generation Partnership Project):第3世代(3G)以降の移動体通信システムの標準仕様の検討や策定を行う各国標準化機関によるプロジェクト。
*8 UE (User Equipment):スマートフォン、タブレット、PCなど、通信ネットワークに接続するための端末。
*9 gNB(gNodeB): 5G(第5世代移動通信システム)に対応した無線基地局。
*10 エミュレーター:無線通信システムや端末の動作を模擬する装置で、開発・テスト環境を再現するために使用される。
*11 3GPPリリース19: リリースは3GPP(各国標準化機関によるプロジェクト)における技術仕様の機能の単位。リリース19では、Kuバンドを5G NTNバンドへ追加することが検討されている。
以上
参考情報
■関連リンク
- 2024年11月18日リリース:「スカパーJSAT、いつでも、どこでもつながる、革新的な非地上系ネットワーク「Universal NTN」の事業化に向け本格始動 ~異なる高度の通信インフラを融合し、『圏外のない社会』を目指して~」
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/_universal_ntn.html
- 2024年5月27日リリース:フルデジタル衛星「JSAT-31」を発注
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/_jsat-31.html
- 2024年5月28日リリース、「世界初、高度約4km上空から38GHz帯電波での5G通信の実証実験に成功~成層圏からの5G通信サービスの早期実現に大きく前進~」
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/4km38ghz5g.html
- 2023年11月28日リリース:「Amazon の Project Kuiper と NTT、スカパーJSAT、戦略的協業に合意 高度な衛星ブロードバンドサービスを日本で提供」
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/amazon_project_kuiper_ntt.html
- 2022年7月20日リリース:「Space Compassの業務開始について」
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/post_181.html
- 2022年4月26日リリース:「NTTとスカパーJSAT、株式会社 Space Compassの設立で合意 ~持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙統合コンピューティング・ネットワーク事業をめざして~」
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/ntt_space_compass.html
- 2022年1月17日リリース:「エアバス、NTT、ドコモ、スカパーJSATの4社がHAPSの早期実用化に向けた研究開発などの推進を検討する覚書を締結 ~衛星とHAPSを組み合わせた大規模ネットワーク構想の実現をめざす~」
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/4hapshaps.html
- 2021年5月20日リリース:「NTTとスカパーJSAT、持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業のための業務提携契約を締結」
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/ntt.html
- 2021年3月25日リリース:「フルデジタル衛星「Superbird-9 」を発注」
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/_superbird-9.html
- 2021年3月10日リリース:「上空からの通信エリア化に向けた39GHz帯の電波伝搬測定実証実験 ~HAPSによる市街地・山林・離島のユースケースを想定~」
https://www.skyperfectjsat.space/news/detail/39ghzhaps.html