革新的な通信ネットワークと地球規模のデータ収集ネットワークで、超スマート社会の実現に貢献します。
取締役
スカパーJSAT株式会社
宇宙事業部門長
小川 正人

既存顧客に対する通信回線サービスの長期契約更新の提案に加え、国内衛星ビジネスでは、通信衛星および回線の運用を通じて得たノウハウ、ならびに衛星機器や地上局設備を活かして新たなサービスを展開します。例えば、近地球追跡ネットワークに関し、ノルウェーのKongsberg Satellite ServicesASの海外地上局と当社の国内地上局を合わせ、JAXAを含めた官庁へのサービス提供を行います。
グローバル・モバイル分野では、HTS2機(JCSAT-1C、Horizons 3e)および調達中のフルデジタル衛星でもあるHTS2機(Superbird-9、JSAT-31)を活用し、航空機・船舶向けインターネット回線をはじめとする成長市場に向けた高速・大容量の通信サービスの提供を拡大し、競争力の強化と収益の拡大を目指します。Superbird-9については、打ち上げ前のプレセールスを開始しており、パナソニック アビオニクス(株)と航空機向けの大容量のインターネット回線を提供する契約を締結しております。
また、衛星カバレッジの拡大や通信容量の増強に向けた海外事業者との連携やM&Aについても検討を進め、海外市場における営業展開を強化してまいります。
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通信分野においては、未来社会の多様な通信ニーズに応えるため、パートナー企業と連携しながら、静止軌道衛星に非静止軌道衛星、HAPSなどを加えた多層的なネットワーク(Universal NTN)と、光通信技術や宇宙コンピューティング技術を取り入れた宇宙空間におけるICTインフラ基盤の構築を推進してまいります。その一環として、(株)Space Compassを通じてAALTO HAPS Limitedに対し1億ドルを出資しました。また、NTTグループと共に、Amazon.com, Inc.が提供する「Project Kuiper」との戦略的協業に合意し、高い信頼性と広範囲のカバーエリアを実現する低軌道衛星ブロードバンドネットワークを日本のお客さまに提供します。
スペースインテリジェンス事業においても、パートナーシップを推進しています。(株)QPS研究所とは、36機の小型SAR衛星によるコンステレーションの構築と、それらを活用した事業に取り組んでまいりましたが、2023年7月には小型SAR衛星の運用業務に係る契約を締結し、技術・運用面においても連携を強化しました。また、2024年1月には、(株)天地人との間で出資契約を締結しました。地球観測衛星から得られるデータを活用した事業の拡大と新規事業の共同開発を目指します。
新たな技術を用いたサービスの事業化にも取り組み、事業拡大してまいります。2024年1月には、レーザー技術を活用したスペースデブリ除去サービスと衛星ライダーサービスを推進するため、(株)Orbital Lasersを設立しました。また国内外の宇宙関連スタートアップや宇宙系ベンチャーファンドを対象に100億円の投資枠を設け、その第1号案件として業界最大規模の投資実績がある英国の宇宙ベンチャーキャピタル「Seraphim Space Ventures II LP」への投資を実行しました。今後も有望なスタートアップとの連携を強め、新たな宇宙ビジネスを創造するため、積極的に資金を投入する方針です。
宇宙事業は、超スマート社会の実現に貢献することを事業ビジョンとして掲げており、全ての空間を対象とした革新的な通信ネットワークと地球規模のデータ収集ネットワークを構築することにより、2030年度のセグメント利益210億円を目指しています。
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重要課題テーマ
マテリアリティ
長期
長期目標
(2030年にありたい姿)
短期
短期達成目標
2023年度活動実績
レジリエントな放送・ 通信インフラの構築/ 情報格差の解消
あらゆるエリア・環境への放送・通信インフラの提供
災害に強いレジリエントな放送・通信インフラの 提供を通じたBCP及び救援・復興支援
技術イノベーションを踏まえた衛星通信サービスの高信頼性・高持続性に向けた取り組み
どんなときも、地球上のあらゆるものや場所に対して信頼性の高いコネクティビティを提供することにより、特に条件不利エリアや開発途上エリア等におけるデジタルデバイド の解消と通信環境の改善に寄与し、人々のより自由な情報へのアクセスを実現する
さまざまな災害から人命・経済・暮らしを守り支えるための強靭な通信ネットワークを 提供し、災害に対するレジリエンス強化に貢献する
サービスの安定につながる新たな技術の開発や採用に加え、社外とのパートナーシップ による衛星や管制設備の冗長化などに積極的に取り組み、サービスの高度化と信頼性向 上をともに実現する
静止衛星フリートの利用帯域を前年度末より拡大する
保有衛星以外も含めて衛星通信サービスの拡充を進める
静止衛星フリートの利用帯域を前年度末より拡大する
保有衛星以外も含めて災害対策に有効なサービスを開発、拡充する
防災支援機関や企業等との耐災害パートナーシップを拡大する
重大なサービス断を毎年ゼロ件にする
※
重大なサービス断…電気通信事業法施行規則第58条に準じる
衛星フリート利用帯域:前年度比112%
事業提携先の主要衛星サービス(船舶向け)契約数は前年度並みを維持
衛星フリート利用帯域:前年度比112%
事業提携先の主要衛星サービス(船舶向け)契約数は前年度並みを維持
JSAT MOBILE Communications(株)が提供するサービスにおいて 重大なサービス断が1件発生
脱炭素社会と循環型 経済の実現に向けた
環境への寄与
衛星を利用したCO2削減の支援
再生可能エネルギーによる発電・供給への寄与を拡大し、脱炭素社会インフラの普及、 利用拡大に貢献する
日射量予測/太陽光発電出力予測システムサービスをユーザーに提供開始し、 ユーザー企業による再生可能エネルギーの活用効率や運用効率を向上させる
チャレナジーの風力発電機と衛星通信サービスを組み合わせた脱炭素防災通信ソリューションを拡大させる
日射量予測/太陽光発電出力予測システムユーザー企業の太陽光発電所の
出力の総計:前年度比約8倍
チャレナジー風力発電案件:1件
環境や社会に寄与するイノベーションの推進
リモートセンシングの開発・推進
NTN事業の開発・推進
リモートセンシング事業を推進することにより地球環境改善や安心安全な社会の発展に寄与する
すべての空間を対象とした革新的な通信ネットワークを構築し、Society 5.0が提唱する 超スマート社会の実現に寄与する
リモートセンシング活用事例を拡大する
地球観測(EO)事業者、データ解析プラットフォーム 事業者、データ利用事業者とのパートナーリングを拡大する
事業開発関係先とのパートナーシップを推進する
事業計画を策定し(見直し含む)、アクションプランを 実行する
3GPPへの参加等を通じて標準化活動を推進する
斜面・インフラモニタリング:「LIANA」サービスの契約数が順調に伸長
衛星SAR画像:(株)QPS研究所と幅広く連携しながら、SAR画像の応用範囲を広げるために複数の画像解析アルゴリズムを開発・実証中
パートナー企業とともにHAPS(高高度プラットフォーム)を用いた携帯端末での高速 通信を実用化することを目指して研究開発を推進
GEO/NGSOを連携させた将来のマルチオービット戦略を視野にLEO事業者との業務提携契約を締結
2024年5月、新たな通信衛星JSAT-31の調達契約をThales Alenia Spaceとの間で締結しました。JSAT-31は、スカパーJSAT史上最大の通信容量となる50Gbpsクラスの通信容量と高い柔軟性を持つフルデジタル衛星です。同社から通信衛星を調達するのは今回が初めてですが、同社の次世代衛星プラットフォーム「Space INSPIRE※」を採用することで、通信需要に応じて軌道上でサービスエリアや周波数・電力といった衛星リソース配分を効率的に変更することができます。2027年に打ち上げを予定しており、KaバンドとKuバンドの周波数帯を用いて、日本、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島に対し、高速大容量通信回線を提供します。
これまで以上にお客さまの高度なニーズに対応するため、調達中の通信衛星「Superbird-9」等と組み合わせて革新的な次世代衛星通信サービスを実現し、グローバル・モバイル分野を中心とした成長市場の需要を取り込んでいきます。
※
INstant SPace In-orbit REconfiguratio

JSAT-31のイメージ
“いつでも、どこでも、あらゆる通信要求に応える”ために、静止軌道衛星に非静止軌道衛星、HAPSなどを加えた多層的な通信ネットワーク(Universal NTN)の構築を推進しています。Space Compassと(株)NTTドコモは、Airbus Defence& Spaceおよびその子会社であるAALTO HAPS Limitedと、HAPSの早期商用化を目的とした資本業務提携に合意しました。
AALTO HAPS Limitedが製造・運用するHAPS「Zephyr」は、2022年に無人航空機として世界最長となる64日間の滞空飛行を実現しています。HAPSを利用することで、通信環境が整っていない空、海上、山間部における端末との高速大容量・低遅延の直接通信はもとより、高精細画像による被災状況のリアルタイム観測や送電線監視保守業務などにおける長期間の定点観測も可能になります。この出資により、HAPSの早期商用化を支援し、日本における2026年のHAPSサービス提供開始を目指すとともに、アジアおよび世界に、新たな成層圏プラット
フォームを確立、拡大してまいります。

HAPSのイメージ
私たちは、地球観測衛星オペレータの販売代理店として、地球観測衛星から取得したデータを顧客にそのまま販売するだけでなく、そのデータを活用してAIデータや外部データと組み合わせて分析・解析を行い、情報サービスを提供しています。当社の分析・解析技術を活用し、地球観測衛星で得られたデータを、ユーザーのニーズに合わせたアウトプットとなるように変換して提供しています。スカパーJSAT(株)と(株)ゼンリン、日本工営(株)の3社は2020年に「衛星防災情報サービス」を立ち上げました。このサービスは、衛星を活用して防災に必要なデータを提供するサービスで、SAR衛星により取得したデータの解析と表示コンテンツの開発を当社が担い、被災状況の算出に必要な地図データの提供を(株)ゼンリンが、危険性の評価を日本工営(株)が担当しています。
この取り組みの一環である「LIANA」は、JAXAの衛星が観測したデータに私たちが独自に開発した解析アルゴリズムを施し、斜面やインフラの変動量をミリメートル精度でモニタリングするソリューションで、2022年にサービスを開始しました。このサービスにより、斜面や盛土などの土構造物や道路、埋め立て地および周辺の変動量を時系列で可視化することができます。例えば、平時から盛土や道路や橋、鉄道などの重要インフラ周辺の土地の様子をモニタリングし、そのデータを蓄積・比較することで、地盤変動を確認し、「ある場所では数年で十数ミリ沈下した」など、危険な場所を抽出することができます。早期にリスクを把握して適切な対策を講じることができるため、自治体や企業において地盤沈下や地滑りなどの災害対策に利用されており、被害を最小限に抑えることができます。
さらに、私たち独自のアルゴリズムを用いることで、画像の分析・解析を超短期間で行うことができます。例えば、通常80時間かかる地盤沈下の計測作業をわずか1時間で処理することが可能です。衛星の最大のメリットである広域性を活かす際には広範囲での解析が行
われ、数百か所~数千か所での解析において各々80時間ずつかかる処理が1時間に削減されることになります。そのため、専門家の人件費が大幅に削減できるのみならず、数千万円規模でかかる膨大なクラウド費用をも1/80に削減することができ、結果として低コストでサービス提供をすることが可能となります。この迅速かつ効率的な解析能力は、私たちの大きな競争力の一つです。
現在、当社はより安定的にお客さまにデータを提供するため、上流の「地球観測衛星のコンステレーションビジネス」にも力を入れており、地球観測衛星オペレータの代理店として販売活動を推進しております。今後は、当社独自の地球観測衛星のコンステレーションを所有することも視野に入れています。必要な地球観測衛星データをタイムリーかつ高精度に提供することと、データの品質と信頼性を確保しつつより柔軟なサービスを展開することで、私たちはお客さまのニーズに一層迅速かつ確実に応えたいと考えています。
宇宙から得られるデータはますます身近なものとなっていきます。
私たちは、このデータを活用し、未来・地球・人類に貢献し続けたいと
考えています。地球観測衛星データの可能性を最大限に引き出し、より安心・快適な地球にしていくためにこれからも挑戦を続けていき
ます。

木村 勉
スカパーJSAT株式会社
宇宙事業部門
新領域事業本部
スペースインテリジェンス事業部長
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