スカパーJSAT

宇宙事業|統合報告書2025

「Multi-Orbit」戦略を推進しながら、ビジネスモデルを変革します。

取締役

スカパーJSAT株式会社
宇宙事業部門長
山下 照夫

宇宙事業の重要課題とKPI

重要課題テーマ

マテリアリティ

レジリエントな放送・通信インフラの構築/情報格差の解消

あらゆるエリア・環境への放送・通信インフラの提供

災害に強いレジリエントな放送・通信インフラの提供を通じたBCPおよび救援・復興支援

Universal NTN™の構築に向けた取り組み

脱炭素社会と循環型経済の実現に向けた環境への寄与

衛星を利用したCO2削減の支援

環境や社会に寄与するイノベーションの推進

リモートセンシングの開発・推進

放送・通信の高度化、技術開発などによる新しい価値の提供

SWOT

SWOT

中長期の事業戦略

収益基盤強化

国内衛星通信分野は、官公庁や地方自治体のほか、インフラ企業の長期契約が安定した収益基盤となっていますが、昨今の宇宙関連予算の拡大に伴い、特に安全保障向け通信ネットワークの提供をさらに強化していく方針です。
グローバル・モバイル分野では、次世代衛星Superbird-9とJSAT-31を投入し、2030年には現在の4倍になると予測される東南アジア需要を獲得します。また、当社は「Universal NTN™」構築を推進し、自社の静止軌道衛星に加え、他社の衛星や低軌道衛星、HAPSを組み合わせた「Multi-Orbit」戦略を推進し、いつでも、どこでも、あらゆるニーズに応えるユニバーサルな通信環境の提供を目指します。
国際共同研究チームが取り組む次世代通信技術の実証に参画しています。2025年5月に大阪・関西万博において、静止軌道衛星を経由し、国境を越えた5G NTNリアルタイム通信の実証にも世界で初めて成功しました。今後、コネクテッドカーや自律船といった新たなモビリティが登場する中で、通信ニーズはさらに多様化していくことが予想されます。当社グループはこのような変化に対応し、収益基盤強化を図っていきます。

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次世代衛星Superbird-9とJSAT-31のイメージと静止軌道衛星通信東南アジア需要予測の棒グラフ

事業の進化

宇宙事業は事業環境の変化を見据え、ビジネスモデルを変革することで新たな収益源を獲得します。特に衛星データの需要拡大に対応し、低軌道地球観測衛星コンステレーションを自社保有するとともに、画像解析技術を組み合わせた高度なサービスの展開により、事業を進化させてまいります。
安全保障を中心に、官公庁・自治体向け衛星画像販売を拡大しながら、中長期的には防災・減災に加え、金融、保険、農林水産、物流など、新たな市場の開拓を推進します。すでにサービスを開始している「LIANA」は、地盤沈下や地滑りなどの災害対策に利用されています。また、(株)WHEREと土地の変化を検出するシステムを共同開発し、(株)天地人とは水道管の漏水リスク管理システムに関する協議を進めています。このように、先進的なスタートアップとの連携を通じて、衛星データを活用した新たなソリューションやプロダクトの創出を加速してまいります。その他、30機以上の衛星管制・運用で培った技術やノウハウを活かして、衛星運用受託と地上局サービスの拡大にも注力します。

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Pelicanのイメージ図

宇宙事業を通じた安全保障への貢献と挑戦

スカパーJSAT(株) 宇宙事業部門 宇宙安全保障事業本部  安全保障事業部長 野々山 将之

野々山 将之

スカパーJSAT(株)
宇宙事業部門 宇宙安全保障事業本部 
安全保障事業部長

安全保障における宇宙の重要性

近年、米中対立やウクライナ侵攻などを背景に、国際情勢は一層不安定さを増し、日本は戦後最 も厳しく複雑な安全保障上の課題に直面しています。こうした中、宇宙空間はサイバーなどとなら び、従来の陸・海・空だけには収まらない新たな横断領域として注目されています。防衛省の宇宙関 連予算は、2023年度から2027年度の5年間で累計1兆円規模に上る見通しです。

防衛省は、宇宙から「つなぐ」、「とらえる」、宇宙を「まもる」という3つのキーワードで取り組みを進 めています。衛星通信などで宇宙から「つなぐ」、地球観測衛星などで宇宙から「とらえる」ことを求 めています。そして、地上や宇宙のインフラ設備を活用して宇宙空間を観測し、安定的に利用できる 状態を持続的に保つことで宇宙利用を「まもる」ことも求めています。これらの防衛省の方向性は、 当社事業とも親和性が非常に高くこれまで培ってきたアセットとノウハウを最大限に活かすことで、 宇宙の安全保障への貢献を進めています。

当社の貢献領域

まず、最初に宇宙から「つなぐ」における貢献をご説明します。スカパーJSAT(株)は初号機の衛星 を打ち上げた1989年に防衛省向けの通信ミッションを担って以来、35年以上にわたり安全保障領 域においても衛星通信で確固たる地位を築いてきました。現在も防衛通信衛星きらめき1号・2号・3 号に関するPFI事業を担う企業の代表を務めており、関連企業とのコンソーシアムを主導しつつ、それ らの衛星の運用・維持管理を任されています。安全保障上極めて重要な通信基盤の安定運用を支え ています。また、衛星というアセット自体が海底ケーブルと同様に日本の経済安全保障の重要な 通信手段を担っていると捉えることもできます。

次に、宇宙から「とらえる」における貢献についてです。地政学リスクの高まりにより衛星画像 需要も急速に増加していることを受け、当社グループは2025年2月に、米国のPlanet Labs PBC. との協業により、低軌道衛星を自社保有し、コンステレーションを構築、保有すべく、総額約400 億円の投資を決定しました。宇宙から撮像する衛星画像は、陸・海・空あらゆる領域・空間をリア ルタイムで監視することが可能です。例えば安全保障においては軍事施設の動向を常時監視し、 不審な活動や異常な動きがあれば即座に検知するなどの実効的な活用が期待されています。今 回調達する地球観測衛星から得られる画像は、世界最高水準の解像度30cmを誇り、宇宙から 車種を特定できるほど鮮明です。このような優れた画像を、外部調達から自社調達に切り替えて いくことで、安定的な供給体制と最優先撮像権の確保を確立することにより競争優位性を確固 たるものにすることができます。

官公庁への強固な販路(ネットワーク)に加え、防衛関連ならびに宇宙関連企業との連携を活 かす、独自のコーディネート力やこれまでの経験と実績を通じて、当社は我が国の安全保障戦略 において重要な役割を果たしているのです。

中長期の成長分野

中長期的には、宇宙を「まもる」においても貢献する予定です。 スカパーJSAT(株)は、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の技術試験衛星9 号機に宇宙設置型光学望遠鏡を搭載します。わが国の軌道権益において運用されている官民の 重要な静止軌道衛星を常続的に監視することにも積極的に取り組んでまいります。このことが、ア ジア・太平洋地域上空の静止軌道を安定的な状態に保つことの一助になればと考えています。

また、衛星での量子伴配送を実現することにより、南西諸島などの離れた地域や、船舶などの 移動体との通信においても秘匿性の高い暗号を提供することが可能となります。

さらに、国内にとどまらず、これまでに培った実績や技術、ノウハウを海外の安全保障市場に水 平展開することで、グローバルな貢献も目指してまいります。

安全保障領域の取り組み

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