スカパーJSAT

社長メッセージ|統合報告書2026

宇宙インフラの可能性を広げ、新たな価値を創り続けます。

代表取締役 執行役員社長

米倉英一

2030年はゴールではない 宇宙の力で社会を支える時代へ

私は2019年の社長就任以来、「利益を創出できる組織づくり」を進めてきました。企業は価値を生み出し、その対価として利益を得る存在です。どんな強みを持ち、どこに投資をし、どのように稼ぐのか。その一つひとつを突き詰め、数字で語れる事業にしていく。その積み重ねが、企業価値の向上につながると考えています。

社長に就任した当時、私がまず社内外に伝えたかったのは、スカパーJSATは単なる通信の会社でも放送の会社でもなく、「社会に不可欠な衛星というインフラを提供する企業である」ということでした。当社は長年にわたり、自社で衛星を保有・運用し、それを活用したサービスを提供してきました。この「インフラを自ら持ち、運用し、そこから価値を生み出す力」こそが、当社グループの根幹であり、競争力の源泉です。

一方で、私たちを取り巻く環境は急速に様変わりしています。宇宙空間の活用や、安全保障需要の高まり、そしてAIをはじめとするデジタル技術の進歩です。私は、これらの変化は単なる市場機会の拡大ではなく、当社の存在意義そのものを変える可能性を持っていると考えています。かつて宇宙は、国家や一部の研究機関を中心に活用される特別な領域でした。しかし現在は、安全保障、通信、地球観測、災害対応、物流、エネルギー、金融など、社会と経済活動を支える現実のインフラとなりつつあります。月や火星への進出、宇宙空間でのデータ処理やエネルギー創出も、もはやSFの世界の話ではありません。ビジネスの現場では、すでにリアリティを持って議論されています。

今は、宇宙産業が研究や開発にとどまらず、宇宙を活用していかに社会課題を解決するかを問われる時代だと考えています。重要なのは、宇宙へ行くことそのものではありません。社会やお客さまが抱える課題に対して、どのように役立てることができるのか。その問いに答えられる企業こそが、これからの宇宙産業において価値を生み出せる存在になると信じています。

また、AIの進化により、人や企業、政府が扱う情報量は飛躍的に増加しています。しかしAIだけでは価値は生まれません。どれだけ高度なAIであっても、必要な情報がタイムリーに届かなければ、意思決定には使えません。AIが真に力を発揮するためには、信頼できるデータと、それを瞬時に届けるインフラが重要なのです。

当社が新たに取り組む地球観測衛星は地球上のあらゆる場所を観測し、地上からは見えにくい変化も広域かつ継続的に把握することができます。そして、通信衛星は国境や地理的な制約を超えて情報を届けることが使命ですが、災害で地上の通信網が途絶えたとしても影響は受けません。この組み合わせによって、当社の存在価値が再定義されると考えています。

AI時代の意思決定の高度化に向けて、宇宙インフラは、その判断根拠となる「現実世界のリアルタイムデータ」の提供を担います。「何が起きたか」を把握し、究明していた時代から、「何が起きるか」を予測し、先回りした対応を行う社会への鍵となるのです。インターネットが情報流通を変えたように、宇宙インフラが社会の意思決定そのものを変えていく時代において、その重要な役割を担うことで会社成長の原動力につなげたいと考えています。

中期的なターゲットとして利益などのKPIを掲げた2030年度は、こうした時代に向けた重要な通過点です。しかしながら、私は2030年度をゴールとは考えていません。その先にある、宇宙が社会や経済活動に不可欠な基盤となる時代に向けて、スカパーJSATの新たな価値を創り上げていきます。

宇宙はもはや夢を語る場所ではありません。宇宙は実践の場です。社会課題の解決や、新しい価値創造に挑む現場なのです。

「Multi-Orbit」戦略の先にあるもの
「宇宙ソリューションプロバイダー」への進化

具体的に、どのような価値を提供していくのか。当社は40年以上にわたり、GEO(静止軌道)衛星を活用し、通信や放送サービスを提供する宇宙インフラ企業として成長してきました。衛星を保有し、運用し、そこからサービスを提供する。この一連の事業を長年にわたって継続してきたことは、当社にとって大きな財産です。現在は「Multi-Orbit」戦略のもと、GEO、LEO(低軌道)をはじめとする多様な宇宙空間を活用しながら通信・放送から地球観測へと事業領域の拡大を進めています。しかし、当社が目指しているのは利用する衛星の機数や種類を増やすことでも、商材を増やすことだけでもありません。

意思決定を支援する「宇宙ソリューションプロバイダー」へ

意思決定を支援する「宇宙ソリューションプロバイダー」へ

これまでの宇宙ビジネスの世界では、「GEOかLEOか、あるいはMEO(中軌道)か」という議論が中心になりがちでした。しかし今後は、単一の軌道や技術だけで競争する時代ではありません。重要なのは、地上インフラや人財を含め、それらをどのように組み合わせ、お客さまにとって最適な価値を提供するかです。技術そのものに価値があるのではなく、それがお客さまの課題解決につながって初めて価値になります。お客さまが本当に求めているのは、衛星そのものではありません。必要な情報を、必要なタイミングで、意思決定に使える形で得ること。それこそがお客さまが求めていることです。

これは、私が投資家やお客さまとの対話の中で強く感じていることでもあります。例えば、災害対応を行う自治体が必要としているのは、衛星そのものではなく、被災状況を迅速に把握し、次の行動を判断するための情報です。安全保障分野で求められるのも、衛星画像そのものではなく、その情報をもとに迅速かつ的確に判断を行うための材料です。企業においても、サプライチェーンやインフラの状況を把握し、経営判断や現場対応につなげるための情報が求められています。つまり、お客さまが本当に求めているのは「宇宙」ではなく、「意思決定に資する価値」です。宇宙はそのための手段であり、インフラであり、価値創造の源泉です。

衛星というアセットを軸に通信、画像、地上局を連携させ、そこから得られるさまざまな宇宙データを組み合わせることで、防災・安全保障・物流・資源開発などの分野において、インフラ監視や必要な対応準備、意思決定支援といった新たな価値を提供できるようになります。さらにAIによる解析を組み合わせることで、情報を届けるだけでなく、お客さまの次の一手を支援することも可能になります。

近年はスタートアップの台頭により、新しい技術やサービスが宇宙産業にも次々と生まれています。これは産業全体にとっても歓迎すべき動きです。宇宙産業が成熟すればするほど、競争の軸は変わっていくと考えています。これからは技術単体ではなく、総合力の競争です。衛星や地上局といった宇宙インフラだけでなく、通信・データ解析の技術、人財、顧客基盤、政府や企業との信頼関係、そしてパートナーシップ。これらを有機的に組み合わせ、お客さまの課題解決まで提供できる企業が選ばれる時代になります。どれか一つの技術だけで勝てるほど、これからのビジネスは単純ではありません。逆に言えば、当社がこれまで積み上げてきた運用実績から得た信用と信頼は、これからの時代にこそ生きてくると考えています。

だから私は、スカパーJSATを宇宙インフラ企業から「宇宙ソリューションプロバイダー」へ進化させたいと考えています。当社が長年培ってきたビジネス知見と経験を生かして事業基盤や顧客との信頼関係、お客さまや社会の課題解決までを担える存在になりたい。それが私たちの描く将来像です。

成長に向けた重点取り組み

成長に向けた重点取り組み

メディア事業の価値を最大化

宇宙事業が成長の原動力である一方で、メディア事業も当社グループの重要な事業基盤です。メディア業界を取り巻く環境は大きく変化しており、動画配信サービスの普及・拡大にともなうコンテンツ調達コストの高騰やお客さまの視聴スタイルの多様化もあり、従来型の有料放送ビジネスは厳しい局面にあります。

しかし私は、単純に成長市場か成熟市場かという見方だけで、事業の価値を判断すべきではないと考えています。経営者に求められるのは、時流を追うことだけではなく、企業価値を最大化することです。そのためには感覚ではなく数字で判断しなければなりません。

メディア事業では、「スカパー!」加入件数の減少という環境変化に対応しながら、そのサービスレベルやサイズに応じたコスト構造とする改革を進めてきました。単に売上規模を追うのではなく、一定の利益を確保できる体質へ転換することを重視してきました。また、スカパー東京メディアセンターに蓄積された設備や技術、ノウハウを活用したメディアソリューション事業にも注力しています。これまでは主に自社サービスを支えるために活用してきたアセットを、外部のお客さまにも提供することで、新たな収益機会を創出しています。

そして、メディア事業における成長のエンジンは光アライアンス事業です。特に光回線を経由してBS・CS・地上波の放送を届ける光再送信サービスが、接続世帯数を着実に伸ばしており、有料放送の収益の漸減をカバーしていきます。こうした取り組みにより、メディア事業全体においては新たな価値創出にも挑戦することで、安定的な利益とキャッシュを創出しています。私が目指しているのは、長年培ってきた設備や技術、人財、顧客との接点といったアセットを活用し、新たな価値を生み出し続ける事業へ進化させることです。放送という枠を超え、お客さまやパートナー企業の課題解決に貢献できる領域を広げていきたいと考えています。

既存のアセットを見直し、その価値を再定義する。スカパー東京メディアセンターをコストセンターからプロフィットセンターへと転換する。これはまさに、私がこれまで大切にしてきた「どう稼ぐか」を考える経営そのものです。

当社の宇宙事業とメディア事業それぞれの役割は異なります。しかし両事業に共通するのは、保有するアセットの価値を定期的に見直し、新たな価値へと転換させ、利益を創出していくことです。私は、その積み重ねが当社グループ全体の持続的な成長につながると考えています。

ビジネスにマジックはない

ここまで成長戦略の話を中心にしてきましたが、私は経営者として常に現実も見ています。ビジネスにマジックはありません。私が大切にしているのは「算盤勘定」と「時間軸」です。

宇宙事業は将来性の大きな市場ですが、同時に長期の投資を必要とする事業でもあります。どれだけ魅力的な事業であっても、収益化への道筋やリスクを見極めることなく進むことはできません。一方で、新しい事業は成果が出るまで時間を要します。短期的な結果だけで判断せず、将来性を見極めながら必要な投資を続ける覚悟も必要です。

私は経営において重要なのは、どの業界で何年経験を積んだかだけではなく、失敗から何を学んできたかだと思っています。成功は時に環境に左右されます。しかし失敗には必ず理由があります。なぜうまくいかなかったのか。どこで判断を誤ったのか。何を見落としていたのか。そこから学び、次の判断に生かすことが、経営には不可欠です。将来の可能性を信じることと、数字を冷静に見ること。この二つを両立することが経営者には求められます。

私は諸先輩方から「我慢、ロマン、算盤」と教わりました。ロマンを語るだけでは経営は成り立ちません。算盤だけを見ていても未来は創れません。そして、その両方を支えるのが我慢です。将来性があると信じる事業であれば、すぐに利益が出なくても投資を続ける覚悟が必要です。一方で、期待だけで事業を続けることはできません。時間軸を定め、リスクを見極め、必要なタイミングで判断することが重要です。

必要な投資はする。しかし、やめるべきものはやめる。流すべきところには水を流し、締めるべき蛇口は締める。その判断をあいまいにしないことが経営だと考えています。宇宙という言葉には夢があります。しかし、夢があるからこそ、数字で語り、現実を見なければなりません。私はこれからも、ロマンだけでなく、算盤勘定と時間軸も持って未来に投資する経営者でありたいと考えています。

会社の未来を決めるのは人財

どんな会社、どんな経営者であっても、会社を動かすのは一人ひとりの社員です。最も重要なのは人財なのです。これからは、当社ビジネス固有の専門人財だけでなく、AI、データサイエンス、ソフトウェア開発、コンサルティング、営業、事業開発など、多様な専門性が求められるようになります。お客さまの課題を理解し、当社が持つ有形無形のアセットやサービスをどう活用すれば解決につながるのかを考え、形にしていく力が必要です。

例えば、宇宙インフラを運用する企業から、「宇宙ソリューションプロバイダー」へ進化するということは、求められる人財像も変わるということです。これまでの強みである衛星運用実績や通信サービスの知見を大切にしながら、新しい技術や発想を取り込んでいかなければなりません。もちろんこれは、宇宙事業に限ったことではありません。急激な環境変化に適応しながら、変革に挑み続ける人財が両事業において必要だと認識しています。そのため当社ではキャリア採用を強化するとともに、リーダー育成や人財開発にも力を入れています。

外部から新しい人財を採用するだけでは十分ではありません。既存の人財が視座を高め、自らの専門性を磨き、会社の変化を自分ごととして捉えることも重要です。私は、社員一人ひとりが自分の仕事と企業価値向上とのつながりを理解することが、組織の力を高めると考えています。また、能力や実績に基づいて挑戦機会を提供する組織づくりも進めています。性別や年齢、入社経路にかかわらず、実力ある人財が活躍できる環境を整えることが重要です。多様な価値観や専門性を持つ人財が集まり、活発な議論を交わすことで、新たな価値は生まれます。

会社ですから、リーダーは必要です。しかし全員がリーダーである必要はありません。強いリーダーも、確かな専門性を持つ人財も、現場を支える人財も、それぞれが役割を果たして初めて組織は機能します。大切なのは、一人ひとりの力を正しく見極め、適切な場所で力を発揮できるようにすることです。私は人財戦略を、人事施策ではなく経営戦略そのものだと考えています。どれだけ優れた戦略を描いても、それを実行するのは人です。会社の未来を決めるのは、最終的には人財です。だからこそ、当社の将来像に必要な人財を採用し、育成し、挑戦できる環境をつくることに、今後も力を注いでいきます。

会社の未来を決めるのは人財

社会を支える企業であり続けるために

当社にとってサステナビリティは、単なる環境対応ではありません。社会インフラ企業として社会課題の解決に貢献するとともに、多様な人財が活躍できる組織づくりや、健全で揺るぎない経営基盤の強化を通じて、持続的な価値創造を実現することだと考えています。

衛星は、地上の通信網が届きにくい地域や、災害時に地上回線などのインフラが損傷した場合にも、情報を届けることができます。離島や山間部、海上など、地理的な制約を超えて通信を提供できることは、社会インフラ企業としての当社の重要な役割です。また、地球観測データの活用は、災害状況の把握、インフラ監視、地理的環境変化の可視化など、さまざまな社会課題の解決に貢献できる可能性を持っています。宇宙事業の成長は、当社の収益拡大につながるだけでなく、社会全体のレジリエンス向上にもつながるものだと考えています。

そのうえで、当社自身も環境負荷の低減に取り組む必要があります。これまでグループ全体で使用電力の実質再生可能エネルギーへの切り替えを進めてきました。2025年度には削減が困難な残余排出量をクレジットなどにより相殺した結果、Scope1、2の排出量実質ゼロを達成し、カーボンニュートラルを実現しました。これは一つの到達点であると同時に、持続可能な社会の実現に向けた通過点でもあります。今後も環境への配慮と社会課題解決の両立を図りながら、社会インフラ企業としての責任を果たしていきます。サステナビリティを事業の外側にあるものとしてではなく、価値創造そのものとして捉え、当社らしい貢献を追求していきます。

本質的な議論が企業価値を高める

長期的な成長を実現するためには、挑戦を支えるガバナンスが不可欠です。宇宙事業は投資回収まで長い時間を要します。新しい技術や市場には不確実性もあります。だからこそ短期と長期の視点をバランスよく持ちながら、本質的な議論を行う取締役会であり続けなければならないと考えています。

私が重要だと考えているのは、正しい情報に基づき、適切な人財が率直に議論することです。形式的に議題を処理するのではなく、当社にとって何が本当に重要なのか、どのリスクを取るべきで、どのリスクを避けるべきなのかを議論することが必要です。変化の激しい時代には、過去の成功体験だけでは判断できません。宇宙事業もメディア事業も、技術や市場環境は大きく変化しています。その中で最適な判断を行うためには、多様な知見や経験を持つ取締役が、それぞれの視点から率直に意見を出し合うことが重要です。

無謀な挑戦と、必要な挑戦は違うと考えています。未来に向けてリスクを取らなければ成長はありません。しかし、そのリスクは事業性や財務規律、社会的責任を踏まえたものでなければなりません。勢いだけで投資を決定することはしません。一方で、必要な挑戦まで避けていては、会社は成長できません。多様な知見や経験を持つ取締役が、それぞれの視点から率直に議論し、最適な意思決定を迅速に行う。その積み重ねが、持続的な企業価値向上につながります。

「未知を、価値に。」のその先へ

2030年以降、当社事業を取り巻く環境はさらに大きく変化していくでしょう。軌道間連携、光データリレーをはじめとする宇宙空間での技術革新やAI活用の高度化、コンテンツIP市場の拡大などが進むと考えられます。

私は、その変化をただ待つのではなく、自ら創り出す側でありたいと考えています。その挑戦は決して容易ではありません。しかし、当社にはそれを実現するだけの技術、人財、財務基盤、そしてこれまで培ってきた信頼があると信じています。

2030年度はゴールではありません。その先に広がる新たな宇宙経済の入り口に過ぎません。これまで築いてきたインフラ運営力と、「我慢、ロマン、算盤」の精神、そして未来を切り拓く人財を力に、私たちは新たな価値創造に挑み続けます。未知を価値に変え続けることで、社会に新たな可能性をもたらしていきます。

皆さまには引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

Disclaimer: The content of this page is automatically translated by AI Schliemann provided by Storm Corporation. Since the AI translation system does not guarantee on 100% correctness, please refer to the original Japanese text for accurate information.