激変する環境下においても変革のスピードを緩めず、2030年のビジョン達成に向けて、挑戦し続けます。
代表取締役社長
2019年に社長として就任した際、中長期の展望が描けず、採算意識も足りていない状況に強い危機感を抱きました。そのため、前例を踏襲することを是とせず、不採算案件を見直し、アセットの稼働率を上げることをこれまで徹底させてきました。当たり前のことですが、ようやく浮力が付いてきたと感じています。2030年に向けては、まだ見直すべきことはありますし、価値があることにはリスクをとってでも大胆に資金を投じることで、激変する事業環境に対応し ていく覚悟です。
宇宙に関しては、大規模な低軌道衛星コンステレーションによる通信サービスが本格的に開始されるなど、サービスや価格面での競争が日増しに激しくなっています。そうした中、大 手衛星オペレータの合従連衡の動きも出ており、ルクセンブルクのSES S.A.が、当社と共同事業を展開しているIntelsat S.A.に対して買収することを発表しています。もはや静止軌道衛星だけでは勝ち抜けない時代であると認識しており、低軌道衛星やHAPSなどのサービスを確立すべく、さまざまなビジネスパートナーと手を携えようとしています。
一方で、政府の宇宙関連予算の大幅な増額やスタートアップの参入、地政学的な変化などもあって宇宙に注目が集まり、ビジネスチャンスが大きく広がっています。これまで30年以上の実績を持つ我々だからこそできることも多く、具体論ベースで形にしていかなければなりません。
メディア事業においては、国内外の動画配信サービスが増えて競争がますます激化していますが、一方で、そうした動画配信サービスをテレビで視聴できるコネクテッドTVの需要も高まっています。
こうした事業環境を踏まえて2030年度までに3,000億円規模の投資をすることを公表していますが、もしかすると3,000億円に収まらないということもあり得ます。
というのも、加速度的に環境が変化しており、そのスピードが増しているからです。例えば、月旅行ができるようになって生活圏が宇宙に広がった時に、通信や放送のインフラとして当社の衛星が活用できるかもしれませんし、その時は電波ではなく、電波より通信速度が速い光を活用したシステムを使うこともあり得るでしょう。そんなことも思い描きながらバックキャストで今取るべき打ち手を講じているところです。
事業環境が激しく変化する中、より高速・大容量で、使いやすく、競争力のあるサービスを提供するため、静止軌道衛星だけではなく、低軌道衛星やHAPSなどを組み合わせた通信ネットワークの構築を進めています。
直近では、大容量で自由に通信地域や伝送容量を変更できる静止軌道衛星JSAT-31の調達を決定しました。従来型の衛星は1機あたり2~3Gbpsの通信容量でしたが、JSAT-31は 50Gbpsクラスの通信容量を有しており、Superbird-9等と組み合わせ、グローバル・モバイル分野を中心とした成長市場の需要に対応します。低軌道衛星はStarlink Japan合同会社やAmazon.com, Inc.が提供するProject Kuiperとの連携も推進していますし、成層圏プラットフォームのHAPSについては、 日本電信電話(株)との合弁会社(株)Space Compassを通じてAALTO HAPS Limitedに出資し、2026年の国内商用化に向けて取り組みを加速させています。

JSAT-31のイメージ
地球観測衛星の分野では、SAR衛星コンステレーションの構築を進める(株)QPS研究所に出資して協業を進めているほか、米国のPlanet Labs PBC.などと連携し、複数の地球観測データを調達することができており、お客さまのニーズに合った画像やデータを組み合わせて提供しています。我々の強みである、衛星通信サービスで培ってきたお客さまとの信頼関係や 販路を活かし、官公庁、インフラ企業などさまざまなお客さまにご利用いただいており、既に衛星画像関連で毎年数十億円規 模の販売実績を積み上げています。加えて近年は、安全保障領域でもこうした需要が急速に拡大しており、2023年度は同領域の売上は約75億円でしたが、2030年度にはこれを150億円規模に倍増させたいと考えています。
加入件数は300万件を割って減少傾向にありますが、残念ながらこれが劇的に改善するとは考えていません。しかし、災害の多い日本において、衛星放送は欠かせないライフライン、インフラとして無くなることはありませんし、プロ野球などのコンテンツは変わらず人気です。放送・配信プラットフォームとしていかに効率よく運営し、かつ、収益源を多角化していくかがメディア事業の命題と言えます。
これまでも厳しい環境下で30億円前後のセグメント利益を維持していますが、2030年に向けてさらに収益性を改善させることでセグメント利益を50億円程度まで積み上げられると考えています。
BSスカパー!や4K放送サービスを終了させたこともその一環です。宇宙事業の収益に影響した面はありますが、将来を見据えた判断をしています。また、収益源も着実に多様化しています。光再送信サービスの接続世帯数が増えることによって収益が増加していますし、ケーブルテレビ局向けのサービスも順調に拡大しています。
さらに、スカパー東京メディアセンターは、これまで放送・配信サービスを支えるためのコストセンターとなっていましたが、企業向けのメディアソリューションサービスを展開することでプロフィットセンター化し、中には宇宙事業とも協力して案件を獲得するなど、新たな収益を生み出しています。
コネクテッドTVは、2024年10月から新開発の専用デバイスの提供を開始します。テレビにデバイスを挿すだけで、普段は スマートフォンで視聴するさまざまな動画配信サービスを、大画面テレビで手軽にお楽しみいただくことが可能となります。
加えて、2024年4月に(株)スカパー・ピクチャーズを設立し、第一作目となる「チ。―地球の運動について―」のアニメ化が既に決定しています。現在、さらに3つのアニメ作品を製作着工中で、今後、数年で10作品以上のアニメ製作を企画から立ち上げ、伊藤忠商事(株)のネットワークを活用して国内外に展開していくことを目指しています。
急にセグメント利益が100億円になるようなマジックはありませんが、このように新たな収益源を創り上げている最中です。
気候変動に対応することは、我々にとってむしろビジネスチャンスと捉えています。もともと衛星通信システムは太陽光発電を利用しており、一度打ち上げてしまえば地上回線より少ない消費電力で通信が可能です。また、当社グループ全体の実質再生可能エネルギー使用比率は既に97%に達しています。
さらに、現在構想中の宇宙データセンタが実現すれば、エッジコンピューターを搭載した人工衛星が宇宙空間上で取得したデータを処理することが可能になり、必要なデータだけを早く地上に送ることができるようになると考えています。そうすれば地震の影響を心配することなく、大量の消費電力を必要とする地上のデータセンタの課題解決にも貢献できます。
これだけ温暖化が進むと、数多あるデータセンタの冷却にも膨大なエネルギーが必要になるので、宇宙のインフラを活用するというニーズは決して小さくないと考えています。
また、宇宙環境の改善の観点からは、スペースデブリをレーザーで除去するサービスをビジネス化するため、(株)OrbitalLasersを設立して取り組みを進めています。宇宙空間を使ってビジネスを行う者としての責任を果たしつつ、事業機会を拡大してまいります。
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当社が今必要としているのは、10年後の世界や社会を想像し、そこから逆算して今何をすべきかを考え、強い意志を持って行動することができる人財です。そのため、年齢や入社年次にかかわらず、問題意識を持ち行動力のある社員を早期に抜擢しようとしています。
例えば、来年度にライン長への登用を考えている人財がいるとしたら、待っていないで今すぐ登用せよ、と言っています。思い切って実力のある人財に任せ、経験を積ませることで将来を担う人財を育てることができると考えているからです。
もし何かのルールが制約になるようであればルールを変えればいいし、ルールが必要なら新しく作ればいいので、若手社員に限らず、シニア世代でも能力があれば登用できるようにしています。
その一方で、人財の獲得においては、専門性に見合った給与体系を設けて即戦力となるスペシャリストの中途採用も積極化していますし、魅力ある会社と感じてもらえるよう、自由度が高く、宇宙・メディアというユニークでやりがいのあるビジネスであることをアピールしています。また、優秀な人財の採用、確保と従業員の生活支援を目的に、初任給と給与ベースアップを実施しました。
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インフラへの投資を今後積極的に行うため、ある程度、資本を厚めにしておく必要があるものの、バランスシートや資本効率を踏まえ、2022年度からの5年間で400億円の株主還元を行うことを公表しています。その方針に沿って2023年度は年間配当を1株当たり21円に増額し、2024年度はさらに1円増額した22円の配当を実施する計画です。さらに、増配に加え、2023年度は50億円の自己株式取得も実行しました。また、株主・投資家目線を持ち、企業価値向上への意識を高めるため、取締役、事業会社の執行役員には報酬の一部を株式で支給しています。従業員に関しても、2019年に持株会の奨励金を5%から20%に引き上げたことで加入数は約半数まで増えましたが、より多くの社員に自社株を持ってもらい、組織と自身の成長にコミットしてほしいと考えています。
また、資本市場との対話を深める目的で、私自身が国内はもとより欧米やアジアの株主・投資家の方々と直接お会いし、2030年に向けて着実に前進していることを積極的にお伝えしています。対話をする中では、宇宙関連が伸びそうなことはわかるが、なかなか形にならないのではないかという厳しい見方もありました。やはり具体的な進捗をもっと打ち出していかなければいけないと再認識し、(株)Space Compassの設立や(株)QPS研究所への出資、安全保障関連での受注拡大など事例を積み上げている最中です。
2030年とその先を見据え、経営戦略である「既存事業の収益性強化」と「新領域事業の展開」の両輪で、スカパーJSATにしかできないようなユニークなビジネスを創造し、企業価値を最大化することで、株主、投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまのご期待に応えていきたいと考えております。今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。
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