スカパーJSAT

社長メッセージ|統合報告書2025

「Multi-Orbit」戦略と「Multi-Alliance」戦略で両事業を推進し、成長への軌道を描きます。

代表取締役社長

米倉英一

2019年に代表取締役社長に就任して以来、株主目線を意識した取り組みを推進してまいりました。2030年、さらにその先の未来に向け、顧客ニーズに沿って、我々のサービスを多層化し、宇宙事業は「Multi-Orbit」により衛星オペレーターから「宇宙ソリューションプロバイダー」へ、メディア事業は「Multi-Alliance」を軸として収益源の多角化を推進してまいります。

まだスタートラインに立ったばかり。これからが本番。

2024年度の業績は2期連続で過去最高益を更新し、PBRも1倍を突破しましたが、浮かれるつもりは全くありません。2030年に目指すビジョンから逆算すると、むしろやっとスタートラインに立ったところだと考えています。2018年に副社長として当社に入社して以降、これまで以上に株主目線を重視し、非効率な取り組みや採算性の低い案件を丁寧に見直してきましたが、コロナ禍で改革のスピードが緩んでしまったため、やっとここまで来た、というのが正直なところです。
我々は、これからの飛躍に向けて一歩踏み込む大きな決断をしました。今後の衛星通信市場環境を考慮すると、静止軌道の衛星だけで大きく成長することは難しいと判断し、中軌道や低軌道、成層圏を含む多層的な「Multi-Orbit」戦略を進め、単なる衛星オペレーターから「宇宙ソリューションプロバイダー」へと大きく舵を切っていきます。まさにこれからが本番です。

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2030年の飛躍に向けた「収益基盤強化」「事業の進化」「新規領域の開拓」

2025年度は、宇宙事業では放送トランスポンダ収入の減少を見込むものの、旺盛な移動体向け通信サービス需要やスペースインテリジェンス事業を確実に伸ばしていきます。メディア事業は、視聴料収入などの減収を、堅調な光アライアンス事業の増収で縮小します。両事業ともに減価償却費の減少が増益に貢献する計画です。
また、宇宙事業を中心に、この先数年の大きな投資を決めたことで、収益性の向上に見通しが立ったことから、2030年度の当期純利益目標を従来の250億円超から280億円以上へと上方修正いたしました。各事業において「収益基盤強化」「事業の進化」「新規領域の開拓」の3つの柱を軸に取り組みを推進します。
現在の当社利益の源泉である宇宙事業の通信関連事業とメディア事業の放送・配信事業は、さらなる「収益基盤強化」を目的に、次世代衛星投入による市場拡大と優良顧客基盤の維持を図ります。「事業の進化」では、安全保障領域での政府予算の増加に伴い、大きな成長が見込めるスペースインテリジェンス事業、また、着実に収益を伸ばしている光アライアンス事業など、新たな収益源として目鼻のつきはじめている事業の拡大に注力します。「新規領域の開拓」においては、長期的な成長を見据え、将来性のある新規事業として、宇宙状況把握や、光データリレー、スペースデブリ除去、アニメコンテンツIPビジネスなどにも挑戦します。

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宇宙事業とメディア事業の成長に向けた重点取り組み

宇宙事業の戦略

静止軌道一本足から「Multi-Orbit」にシフトし、成長性を確保

グローバルにおける通信分野の競争環境が厳しさを増している中、当社は静止軌道の通信衛星にのみ依存するモデルから脱却し、多層的な「Multi-Orbit」戦略へと大きく舵を切ります。一つは静止軌道衛星に加えて低軌道衛星やHAPSを含む通信ネットワークの構築。ただし、これは必ずしも当社自身がそれぞれのインフラを構築し、保有する、というわけではなく、他社とのアライアンスにより実現させます。もう一つは低軌道地球観測衛星を自社保有することです。これにより、高水準、高頻度の画像を望む既存顧客のニーズに応えつつ、画像データを用いた情報サービスの拡充を図ります。事業基盤を活かしながら、宇宙関連のさまざまなソリューションサービスを提供
する「宇宙ソリューションプロバイダー」へと進化します。2030年度にはセグメント利益で220億円以上を目指します。

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攻めと守りの衛星投資

宇宙事業はインフラビジネスであり設備産業です。市場予測をして衛星の仕様を設計、発注して打ち上げた衛星を運用し、価値を創出する、これがそもそもの生業です。国内向けの通信関連事業はまさにその土台で、携帯電話のバックホール回線に加え、電力会社などのインフラ企業には、非常時用のバックアップ回線として通信サービスを提供しています。この分野は大きな成長は見込めないかもしれませんが、公共性が高く、官公庁・自治体などや経営基盤の安定した顧客から着実にキャッシュフローを生み出しており、守るべき事業と位置づけています。一方、衛星通信需要が旺盛なアジア地域や航空機Wi-Fi市場においては、価格競争が激化していますが、価格
競争力のある新型衛星の先行投入により、市場シェアのさらなる拡大を目指します。また、低軌道地球観測衛星への投資は、安全保障需要の高まりを追い風に自社保有のリスクを取りながら新たに挑戦する、攻めの投資です。
万一の打ち上げ失敗や軌道上の故障などに備え、衛星再調達のための資金を確保しておく必要があります。当社の安定的な収益基盤を維持し成長し続けるため、慎重に需要予測を行う一方で、適切にリスクも取りながら「Multi-Orbit」戦略を実現し、しっかりと利益を拡大します。

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スペースインテリジェンス事業が成長を牽引

2030年度に向けて収益を牽引するのはスペースインテリジェンス事業です。
当社はパートナー企業から衛星画像データを仕入れて販売する代理店ビジネスを約10年にわたり展開してきましたが、代理店ビジネスである以上、参入障壁の低さをリスクと捉えていました。そのため2025年2月に、地球観測用の低軌道衛星10機を自社保有することを決定しました。もちろん自社保有にもリスクはあります。例えば打ち上げ失敗のリスクです。以前は衛星打ち上げには大きなリスクをともないましたが、今や米国SpaceXのロケットは、毎週複数回打ち上げられ、その成功率は99%以上まで向上し、リスクは低減されています。また、長年のビジネス経験や顧客とのコミュニケーションから十分に需要があることもわかっています。優先的に撮像権を保有し、撮影データを自社でコントロールし、確保できるメリットを考えれば、リスクを取って挑戦する価値は十分にあると判断しました。
実は、低軌道衛星を保有すること自体の障壁は高くありませんが、当社の場合は衛星だけでなく、北海道から本州、沖縄まで衛星を運用・監視できる地球局を7か所保有しており、これは他社の追随を許しません。画像解析においてはデータアナリストなど専門知識を持つ人財も当然必要となります。それらを考慮すると、参入障壁は決して低くはないと思っています。

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メディア事業の戦略

筋肉質化とBtoB事業への展開を加速

メディア事業は、ご承知の通り、国内外の動画配信サービスとの競争にさらされていますが、加入者が減少しても利益を確保できるよう筋肉質化をさらに推し進めています。また、安定的な収益が見込める事業領域への注力に加え、既存の経営資源を戦略的に活用することで、収益構造の強化を図り、2030年度にはセグメント利益70億円の達成を目指します。

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市場の変化に対応した収益モデルへの変革

「スカパー」の加入件数は、2014~2015年をピークに減少が続いています。しかし、島国の日本には、地上回線がなく、衛星放送を必要とする地域が一定数存在するため、衛星放送はなくならないと考えています。この先、さらに加入件数が減少したとしても、損失を出さないことはもちろんですが、宇宙で稼いだ利益でメディアの赤字を埋めようなどとは考えていません。メディア事業単独で利益を出し続けることができるようさらに筋肉質化を進めていきます。
セグメント利益で最低でも50~60億円、それに加えてあらゆるパートナーとの「Multi-Alliance」の推進により、光アライアンス事業の拡大やスカパー東京メディアセンターなど既存アセットの有効活用による収益を上乗せし、安定的に70~80億円の利益を稼げる事業にできると考えています。
また、2024年4月に設立した(株)スカパー・ピクチャーズは、アニメを企画・制作する会社ですが、これも「Multi-Alliance」戦略の一環です。コンテンツビジネスは成果の不確実性をともなうため、リスクを最小限にしながら慎重に進めた結果、初年度から黒字化することができました。世界規模で日本のアニメ人気が高まっている背景もありますが、小規模でも確実に利益を積み上げていきます。当社単独では実現できないことも、他社とのパートナーシップ、資本提携なども活用し、メディア事業の収益を多角化していきます。

The number of SKY PerfecTV! subscribers has continued to decline since peaking in 2014–2015. However, I believe that satellite broadcasting will not disappear, as there are a certain number of regions in Japan—an island nation—that lack terrestrial channels and require satellite broadcasting. Even if the number of subscribers decreases further in the future, we will, of course, try to avoid posting losses. We also have no plans to make up for losses in the Media Business with Space Business profits. We will continue to beef up the Media Business to ensure it can generate profits on its own.
I believe that the Media Business can stably generate profits of ¥7 to ¥8 billion by recording segment profit of at least ¥5 to ¥6 billion and driving up revenue through the promotion of the Multi-Alliance Strategy with various partners, thereby expanding the Fiber-optic Alliance Business, and through the effective utilization of existing assets, such as the SKY PerfecTV! Tokyo Media Center.
In addition to that, SKY Perfect Pictures Inc., a company that creates and produces anime that we established in April 2024, is also part of the Multi-Alliance Strategy. As the achievements of the contents business are shrouded in uncertainty, we adopted a cautious approach by minimizing risks as much as possible, and as a result, this business posted a profit in its very first year. While this is due in part to the increasing global popularity of Japanese anime, we intend to steadily build up profits, even on a small scale. We will look to diversify the sources of revenue in the Media Business by leveraging partnerships and capital tie-ups with other companies to achieve what we cannot accomplish alone.

当期純利益の棒グラフ

人財

誇りとやりがいを感じて幸せになれる環境を提供

スカパーJSATが大きく変わろうとしている今、変革を実現するために、その原動力となる人財の採用と育成に力を入れております。高度な専門性が求められる分野では、新卒採用だけでなくキャリア採用も積極的に実施しています。特に、技術系人財の獲得競争は激しくなっており、収益力の向上を図りながら給与水準も競争力のあるものに見直しています。一方で、若手社員のモチベーションを高めるため、入社年次に関わらず抜擢・登用する風土の醸成、人事制度の導入にも取り組んでいます。
もっとも、経営者の務めとして重要なことは、当社の仕事に誇りとやりがいを感じ、心身ともに健康で充実感を得られる環境を社員に提供することです。一朝一夕にはいきませんが、安心して働いてもらえる環境づくり、それから、経済面で安定していると思ってもらえる会社にすることが経営者としての役割だと考えています。
2019年から従業員持株会の奨励金を拠出金の20%まで高めた結果、今では社員の約半数が持株会に加入しています。さらに、従業員へインセンティブを株式で提供するなど、わかりやすい形での制度化にも取り組んでいるところです。

従業員持株会の加入率推移の折れ線グラフ

ガバナンス

持株会社と事業会社を統合

当社は2007年の経営統合以降、持株会社体制を採用してきましたが、2026年4月からは持株会社と事業会社スカパーJSAT(株)を統合し、社名をスカパーJSAT(株)に変更します。当初は持株会社の取締役会に意見を集約し議論を諮ることに意味があったのでしょうが、合併から既に18年が経過し、持株会社であることのメリットよりも、今後会社が変革していくにあたっては迅速な意思決定が必須であると考えています。これによる経営の効率化はガバナンスの強化に資するものです。

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環境

持続可能な社会の実現に向けて

当社は35年以上にわたり、クリーンなエネルギーである太陽光発電を活用した人工衛星で事業を展開してきました。気候変動への対応は、衛星通信事業、スペースインテリジェンス事業のサービス展開において大きなビジネスチャンスと捉えております。当社の衛星通信システムは、太陽光発電を利用しており、地上機器も含め効率的な電力利用により地上回線に比べて約5分の1の消費電力での通信が可能です。なお、2025年度中に当社グループの事業活動における温室効果ガスをゼロにするカーボンニュートラル達成を掲げており、グループ会社の再生可能エネルギーへの切り替えを進めております。2024年度には拠点1か所が新たに実質再生可能エネルギー由来の電力に切り替わりました。引き続き、再生可能エネルギーへの切り替えを推進するとともに、カーボンクレジットを活用し、2025年度中に排出量実質ゼロを達成する見込みです。
今後もサプライチェーンを含めた取り組みにより、持続可能な社会の実現に向けて、カーボンフットプリントの削減、環境負荷低減に取り組んでいきます。

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株価を意識した経営

株主の皆さまと同じ目線で

米倉英一

私自身、株主総会や四半期ごとの決算説明会に加え、国内外の株主・投資家の皆さまと個別に対話する機会がありますが、気づきも多く、株式市場の声を直接聴く貴重な機会と捉えています。
辛辣なことを言われることもありますが、説明責任を果たすべく、就任以来ずっと対話を続けています。企業の論理だけで動いてしまわぬよう、株主の皆さまと同じ目線を持ち続けることが重要だと感じています。私だけでなく、他の役員にも同じ意識を持ってほしく、この度役員報酬制度における譲渡制限付株式報酬の比率を引き上げました。従業員持株会もそうですが、役職員一人ひとりが株主として行動すること、株価を意識することは、資本効率を高める土壌にもなると考えています。

株価については、私が社長に就任した当時、400円台だったものが1,000円を超え、PBRも1倍を上回る状況になりました。しかし、株主目線では、正常な状態に戻ったという評価でしかないと理解しています。過去最高益と言っても当社のROEはまだ7%前後です。これでいいはずもありませんが、テクニカルにROEを引き上げることもまた、本質的ではありません。当社は設備産業で、公共インフラである衛星の寿命が来れば、後継機を新たに打ち上げる必要があるため、ある程度の手元資金を確保しておく必要があります。そういった面では他社に比べROEやROAで見劣りする理由の一つになっていますが、今後の成長に向けて、どう資金を配分し、競争力を高めていくのか、許容されるリスクを慎重に考えながら、長期的な安定と成長を目指します。

おわりに

数ある宇宙関連企業の中でも、当社は宇宙をビジネスとして具体的に展開し実績を積み上げ ている宇宙実業社です。しかし、当社もまだまだ成長の途上です。 今後も引き続き、「未知を、価値に。」というスローガンのもと、新しい価値を創造してまいり ます。皆さまの変わらぬご支援をお願い申し上げます。

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