社長メッセージ

スカパーJSATグループ
「プラン2020+」を推し進め、
基礎収益力向上のための
事業構造改革と成長戦略の実行
をさらに強化してまいります。

代表取締役社長

米倉栄一

はじめに、新型コロナウイルス感染症の拡大により、依然として国内外で深刻な状況が続いております。医療関係者をはじめ、感染拡大の抑止に尽力されているすべての方々にこの場をお借りして心から感謝申し上げます。

2020年度の業績総括

2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の業績への影響が懸念されましたが、前年度と同水準の連結営業収益を維持しました。宇宙事業では、新たに運用を開始したJCSAT-17に加え、従来よりも伝送容量を大幅に拡張したハイスループット衛星(HTS)であるHorizons 3eが収益の拡大に寄与しました。メディア事業は動画配信サービスとの顧客獲得競争やスポーツコンテンツを中心としたコンテンツ獲得競争の激化により、厳しい事業環境が続いていますが、有料多チャンネル放送「スカパー!」の累計加入件数300万件超を維持しています。一方で、メディア事業の営業費用が大きく減少したため、2020年度の連結営業利益は前年度比26%増、親会社株主に帰属する当期純利益は11%増となりました。

持続可能な成長に向けて

当社グループを取り巻く事業環境は、デジタル技術の革新を背景に大きなターニングポイントを迎えています。そうした中で私たちは、持続可能な中長期の成長に向け、「REPOWERING(人)」「REBUILDING(事業)」「REBRANDING(会社)」の3つの柱を軸に抜本的な経営改革・事業構造改革を目指すスカパーJSATグループ「プラン2020+」を経営方針として掲げ、推進しています。

REPOWERING(人)

「人の変革」にフォーカスしたREPOWERINGについては、コロナ禍をきっかけに場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を実現し、在宅勤務を中心とした業務運用で支障なく事業を遂行できる体制を整備するとともに、若手・中堅社員の積極的な抜擢に取り組んできました。これからも、さらに生産性が高く、創造力に富む強靭な企業を目指し、私たちのミッションである「Space for your Smile」の実践に向け、従業員一人ひとりが自己変革し、パフォーマンスを最大限発揮できる組織改革を行っていきます。

REBUILDING(事業)

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「事業の変革」であるREBUILDINGでは、当社グループの中長期的な基礎収益力の強化に向けて、事業の「選択と集中」を徹底し採算性の向上を図るとともに、国内外の多様なパートナーと新たなビジネスフィールドの開拓を進めていく取り組みです。

宇宙事業

宇宙事業では、①既存事業強化、②新技術活用・事業領域拡大を両輪に収益力の向上を図ってまいります。中長期的なビジョンとしては、従来の静止軌道上の衛星通信サービスにとどまらず、海洋・地上から宇宙空間までを私たちのビジネスフィールドとし、そこから得られるさまざまなデータを活用した「スペースインテリジェンス」市場を創出していく方針です。
「既存事業強化」については安定収益基盤として、国内外において衛星利用が拡大している携帯電話基地局向けバックホール回線の提供などを拡充するとともに、船舶・航空機Wi-Fi向け回線提供をはじめとするグローバル市場の需要を着実に取り込んでいきます。すでにアジア・太平洋エリアで順調に収益拡大を続けるHorizons 3eに加え、もう一つのHTSであるJCSAT-1Cにより、グローバル市場での継続的成長を実現します。さらに2024年には、通信可能地域や伝送容量を柔軟に変更できるフルフレキシブル衛星Superbird-9の打ち上げを予定しています。こうした最新技術を備えた衛星をいち早く調達し、多様な衛星通信ニーズに対応していきます。
「新技術活用・事業領域拡大」においては、宇宙から得られる画像や位置情報などさまざまなデータとAI分析を組み合わせた情報サービス「Spatio-i」の提供を開始するとともに、事業領域の拡大を目指し国内外の企業・研究機関と積極的にパートナーシップを図っています。その一環としてこのたび、日本電信電話(株)との業務提携契約を締結しました。2025年頃の事業化を目指し、2022年から技術実証を順次始め、事業の土台となる技術開発を進めながら、Beyond 5G・6G時代の「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」による持続可能な社会に求められる統合インフラの実現を目指します。また、宇宙のSDGsをコンセプトに宇宙ごみを除去する独自の技術開発をはじめ、衛星量子暗号技術など次世代技術を活用した事業も検討していきます。

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メディア事業

メディア事業においては、インターネット動画配信サービスの普及に伴って、コンテンツ視聴スタイルが大きく変化する中、
①事業構造改革による収益性の改善、②サービスの拡充と差別化、③新たな収益の獲得という3つの課題に取り組んでいく方針です。
まず、「事業構造改革による収益性の改善」については、コンテンツ獲得、マーケティングのほか、カスタマーセンターや放送設備など全方位で、品質・顧客満足度向上と収益性改善の両面からコスト配分の見直しを実施しています。
「サービスの拡充と差別化」では、人々の在宅時間が増えているなか、テレビ1台分の料金で3台まで追加料金なしで50チャンネル見放題の「スカパー! 基本プラン」が好評で、着実に契約数を伸ばしています。また、さまざまなジャンルで熱量の高い加入者に向け、イベント開催、グッズ販売、SNSコミュニケーション等、従来の放送サービスを超えた多様な楽しみ方を提供するファン・マーケティングを展開し、加入者のロイヤリティ向上に取り組んでいます。家庭内Wi-Fi環境の普及に伴い光回線を契約する世帯が増える中、FTTH事業の契約世帯数は240万世帯を超え、さらに拡大を続けています。一方で、2021年度下期には、オンデマンドサービスを全面的に刷新する予定で、将来的には放送と配信を融合した新たなコンテンツプラットフォームの構築を目指します。さらに、「新たな収益の獲得」に向けてメディア事業でもBtoB市場に参入します。具体的には、国内最大級のオンラインビデオプラットフォームを提供する(株)PLAYとともに国内外の映像配信サービスを支援する「メディアHUBクラウド」事業を立ち上げました。100以上のチャンネルを放送している放送プラットフォームを有効活用し、「配信事業者へ手軽にコンテンツを提供したい」「海外コンテンツをインターネットで配信したい」といった企業・事業者のニーズに応え、収益源の多様化を図っていきます。
中長期的には、「スカパー!」をコンテンツをエンジョイするだけではない、生活スタイルを支えるブランドとして発展させ、コンテンツだけでなく、ヒト・モノ・コトを含めたお客様のライフスタイルそのものを支える事業に進化させたいと考えています。
さらには、宇宙とメディアという、一見かけ離れてみえる両事業をつなぐサービスの創出にも取り組んでいきます。例えば、社会インフラ、ライフラインを支える宇宙事業のサービスの中からBtoCビジネスを創造し、スカパー!と組み合わせることで、新しい世界観をライフスタイルに持ち込むことができれば、当社グループのユニークさをさらに活かすことができ、競合との差別化につながるのではないかと考えています。

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REBRANDING(会社)

2020年10月より「未知を、価値に。」を合言葉に企業ブランディング活動を開始しました。有料多チャンネル放送「スカパー!」に偏りがちなコーポレートイメージを刷新し、地上から宇宙空間までをビジネスフィールドとする、ユニークな挑戦を続けていく当社グループの姿を伝えることで、適正な企業価値評価につなげるブランディングに取り組んでいます。

サステナビリティ経営の深化

当社グループは、創業来、通信・放送という公共性の高い領域で事業を展開し、社会に役立つサービスを提供してまいりました。さらに、世界共通の目標である「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けた取り組みを一層推進し、社会から必要とされ、持続的な成長を続けるサステナビリティ経営を目指すため、2020年9月にサステナビリティ委員会を設置しました。この体制の下、私たちが解決すべき社会課題とは何かをSDGsを起点に抽出し、「レジリエントな放送・通信インフラの構築、情報格差の解消」「多様なコンテンツによる生活の豊かさの向上」「脱炭素社会と循環型経済実現に向けた環境への寄与」などを含む9つの重要課題(マテリアリティ)テーマを特定しました。今後、具体的なKPIを設定し、実践してまいります。
地上から宇宙空間までをビジネスフィールドに「未知」から「価値」を提供できる唯一無二の企業グループとして、私たちだからこそ貢献できる社会課題に真摯に向き合い、企業価値の向上に努めてまいります。株主・投資家の皆様におかれましては引き続きご支援賜りますようお願い申し上げます。